2015年01月10日



交通誘導警備員が有罪判決を受けた交通死亡事故の総括(4)

当該警備員はどのような誘導をすべきだったのか?

加害車両のドライバーの陳述の1つに以下のような文言がある。

「 警備員の進め≠フ合図で進行したところ、横断歩道を歩いて、渡り終わる寸前の老人を認め、一時停止した。ピタッと止まった記憶はない。時速10キロくらい。老人は、警備員の合図を無視して渡ってきた。」

一時停止した。ピタッと止まった記憶はない。時速10キロくらい。??

社会通念上、このような陳述の際には自分が不利になる言を行わないケースが多い。一時停止をしたと言いながら完全に止まったのではなく時速10キロくらいで徐行していたという矛盾した内容。これは一時停止とは呼べない。

裏を返せば、一時停止もしくはそれに近い状態にしなければ、この老人を撥ねる怖れを抱いたという事が想像される。

この陳述には驚かざるを得ない。

何故か?

子供が車に轢かれる前にも老人が轢かれる可能性があったという事だ。

当該警備員は子供が車に轢かれる際にその瞬間を全く見ていないと陳述している。同時に、この老人も同様の危機に直面していたと推察されるが当該警備員はそういう危機が生じていた事さえ把握していなかったようだ。

要するに事故リスクに対する観念が全く無いと言っても過言ではない意識の中で交通誘導業務をしていたという事になるのではないだろうか。

1台の車に対し2度に亘って人身事故を誘発する可能性を秘めた誘導をしていた事になる。

では、どのような誘導をすべきだったのか?

・歩行者を視認した段階で車両を停止させるべきだった

加害車両が横断歩道に近付いた段階で老人が横断歩道を渡り終えていなかったという事だから、この段階で車に対して停止の合図を送るべきだった。同時に後続の母子が横断を終えるまで車の停止状態を堅持するか、状況によっては母子の横断を止めるべきだった。もちろん、歩行者優先だが危機回避の為なら歩行者を停止させ保護する事もアリだ。

・片側交互通行の「進行よし」の合図は、あくまでも片側交互通行区間限定の合図

現場は片側交互通行でペアを組んでいる警備員が「進行よしの合図」を送ったとの事だが、これはあくまでも片側交互通行区間の進行は良しとするものでしかない。自分の守備エリアでリスク要因が発生すれば車を停止させるのが基本だ。

車を停止させた後、ペアの警備員に対しては車の進入をさせないように停止の合図を送り新たなリスク要因を除外する周到さが求められる。

このような誘導を行えば事故は起こり得ない。

この事案は一警備員の問題という事で終わらせてよいのか?
警備会社、警備業界はどうあるべきなのか?


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2015年01月09日



交通誘導警備員が有罪判決を受けた交通死亡事故の総括(3)

交通誘導警備員が工事現場で交通誘導を行う際に心掛けなければならない事を優先順に取り上げると以下のようになると認識しています。

@ 工事に起因する直接・間接的事故を防ぐ
A 事故を誘発する恐れがある渋滞を最低限に止める
B 工事に伴うクレームの発生を防ぐ
C 工事がスムーズに進行するように効率的な誘導を実施する

細かい部分まで取り上げると他にもありますが、基軸とすべきものは上記の4項目だと捉えています。

今回取り上げた事案では交通死亡事故という最悪の結果を招いてしまい、幼くして亡くなられたお子さんとご遺族の無念さを思うと言葉もありません。心よりご冥福をお祈り致します。

被害者に対しても加害者に対しても、この事故を蒸し返すような記事を書く事に躊躇する思いはありますが、この事故の総括が為されていないのではないだろうかという思いを払拭できないのです。このまま風化させてしまえば再び同様の悲劇が起こる恐れがあると危惧せざるを得ず、今後、このような哀しい事故が再発しない為にはどうすべきなのかという思いから記事を書いている事をご理解戴きたい。

● そもそも、この事故は何故起きたのか?

私は、事故というものは複合的な要因が重なって起こるものだと考えています。複合要因が半分取り除かれれば「ヒヤッとした!」「接触程度の軽微な事故」で難を逃れる可能性が高まるが、複合要因が減少しないまま危機ラインに到達すれば重大な結果を招く確率が非常に高くなる。

この事故を読み解くキーワードは

『・・・だろう。』

両被告の陳述では以下の事が語られている。

警備員:「車が止まるだろう。」と思った。
運転手:「警備員が止めるだろう。」と思った。

もし、どちらかが・・・

『・・・だろう』ではなく、『・・・かもしれない。』と思っていたら・・・

異なる結果になった可能性、もしくは事故そのものが起こっていなかった可能性が高い。両者が『・・・かもしれない。』と思って行動していれば間違いなく事故は起きていない。

警備員:「車が止まらないかもしれない。」
運転手:「警備員が止めないかもしれない。」

本件の直接的な原因は運転手の過失だと考えますが、同時に、工事現場で安全確保を厳とすべき警備員という立場を考慮すると、法的な解釈を脇に置いたとしても職務上の注意義務に落ち度があった事は否定できない。

上記の法的な解釈云々という記述は、道路交通法上での警備員の立場が微妙である事を念頭に置いている。警備業法では警備員には警察官のような特別な権限は与えられておらず、道路上で警察官が行う交通整理のような強制力は一切なく、あくまでも協力を求める交通誘導というスタイルだからだ。

ただし、この事故に関しては警備員に強制力があるか否かという問題は全く関与していない。

当該警備員の陳述にもあるように、加害車両に進行の合図を送った後に横断歩道を渡ろうとする親子にも進行の合図を行っているにも拘らず、事故の瞬間は見ていないとの事。

ドライバーの陳述では親子の前に横断歩道を渡り終えていない老人が居たため徐行した旨の言があり、警備員の「車が一時停止をした。」との食い違いが見られる。

少なくとも、加害車両に対する「進行」の合図が取り消されない中で、同時に親子に「進行」の合図を送ったにも拘らず事故の瞬間を見ていないという事は、事故を未然に防ぐという警備員にとって最低限の職責に対する意識が著しく欠けており、交通誘導警備員の経験を持つ私としては全く理解出来ない行動としか映らない。

技術的なミスではない。

「警備員とはどういう存在なのか?」
「警備員はどうあるべきなのか?」
こういう基本的な部分を全く理解していなかったと断じるほかない。

警備員として最低限の基本的スタンスを理解していないのは当該警備員のみであり特異な存在という事なのか?

その答えを一番よく知っているのは、「ドライバー」であり「歩行者」、すなわち警備関係者以外の一般人だろう。少ないながら同様の警備員を見掛ける事がありますから、当該警備員の特異性という事にはなり得ない。一般人に対して「少ないながら」という言葉が通用するか否かは私には分からないが。

当該警備員は事故当時の警備会社を含めて3社での就業経験があるとの事ですから、警備員としては少なくとも中堅以上のキャリアを有していると思われます。

この事故は警備員個人に問題があったのか?

それとも、警備会社? 警備業界全体?


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2015年01月08日



交通誘導警備員が有罪判決を受けた交通死亡事故の総括(2)

まずは、どのような状況の中で事故が発生し、どのような判断の元に判決が出たのかという事を警備保障タイムズ様の記事を転載させて頂いて状況把握を共有したいと思います。

以下は警備保障タイムズ様記事内の事実関係のみ(推測・見解や独自コメントを除く)を引用。

◆判決
加害ドライバー:禁錮1年8か月(求刑に同じ)執行猶予5年交通誘導警備員:禁錮1年(求刑に同じ)執行猶予4年

◆ 事故の概要

平成24年1月13日午前10時ころ、川崎市麻生区上麻生2丁目、市道の交差点において、横断歩道を母親のやや後ろを歩いていた3歳の男児と、交差点を右折進行してきた乗用車が衝突し、男児は頭部を強打して事故から約2か月後に死亡した。

現場は、信号機のない交差点で、水道工事が行われており、警備員2人が片側交互交通規制により交通誘導を行っていた。クルマは、警備員の交通誘導に従って交差点を右折して横断歩道に差しかかり、歩行者の母子も警備員の誘導に従って横断歩道を歩行しており、警備員は、クルマと歩行者双方への重複した誘導により事故を誘発したと判断されたものである。

検察官は、平成24年12月27日、ドライバーと警備員の過失の競合により死亡事故に発展したものと認定し、双方を起訴した。

◆ 判決
加害ドライバー:禁錮1年8か月(求刑に同じ)執行猶予5年交通誘導警備員:禁錮1年(求刑に同じ)執行猶予4年

交通状況の把握が欠如と指摘

・裁判の状況
⑴警備員に対する尋問
ア、身上関係
48歳の既婚の女性警備員で夫も以前同じ警備会社に警備員として従事し、当該警備会社には、平成23年3月から勤務している(警備会社は警備業協会に加入していないため、事前の情報は皆無であった)。

夫の証言によると、まじめな性格で、事故後、極端に落ち込み、自分が代わりに死ねばよかったと自分を責め、自殺の恐れがあった(裁判中も終始泣いており、自分の責任として後悔している様子が認められた)。
運転免許を有している。事故後、警備会社を解雇されていない。

イ、過失関係
道路の片側を工事中のため、片側交互交通規制を男性警備員と2人で行っていた。男性警備員とは6bから7b離れていた。右から加害車両が来た。相手の男性警備員が進行OKの合図をしたため、加害車両に進行の合図を送り、横断歩道の手前で一時停止したのを見て、母子に横断歩道の進行を合図した。

横断歩道は、歩行者優先であるため、歩行者を通しても加害車両は一時停止するだろうと思った。 その直後に、母親の悲鳴を聞いた。加害車両が発進したのは見ていない。衝突の瞬間も見ていない。どこを見ていたのかわからない。加害車両が停止したので見ていなかった。加害車両をしっかり見ていればよかった。

素手で歩行者に進行の合図をした。加害車両が止まっていても、歩行者に明確に合図するべきであった。加害車両の動きも歩行者の動きもよく見ていなかった。

警備員は、自分の携帯で119番した。加害ドライバーはクルマの中にいた。その後、加害ドライバーは「あんたが誘導したんだろう」と怒鳴っていた。

ウ、裁判官の指摘事項
目撃者の供述によると、女性警備員は、普段から誘導灯を腰の高さで、ただ振っていた。周囲の状況を全く確認していなかった(目撃者とは水道工事関係者と思われる)。

交互交通規制の相手方警備員の動静のみに気を取られ、警備員として現場の交通状況を把握するなど肝心なところを見ていない。

⑵加害ドライバーに対する尋問
ア、身上関係
飲食業を営む55歳の男性。競馬法の前科を有し、窃盗罪で懲役刑有り。妻が情状証人として出廷。事故後、12日間逮捕、留置された。事故後、スピード違反で検挙された(遺族が導法意識を問題視)。

イ、過失関係
警備員の進め≠フ合図で進行したところ、横断歩道を歩いて、渡り終わる寸前の老人を認め、一時停止した。ピタッと止まった記憶はない。時速10キロくらい。老人は、警備員の合図を無視して渡ってきた。

周囲に歩行者はおらず、母子には気がつかなかった(周囲の安全不確認)。歩行者が居れば警備員が止めると思っていた。一時停止に近い徐行の後、正面の安全確認を怠り、正面から子供を轢いてしまった。車の右前輪で轢いた。捜査機関の実況見分は、工事が終わってから行っており、裁判官が、再度、法廷で警備員の合図をどこで見たのかを確認した。

事故後、加害ドライバーは、警備員の合図が悪いとずっと言い訳していた。たまりかねて、母親が加害ドライバーの携帯電話を取り上げて119番した。子供は泣いていた。

ウ、裁判官の指摘事項
老人が、警備員の合図を無視して横断歩道を渡ったことについて、警備員の合図がアテにならないことを加害ドライバーに諭す。横断歩道上の母子に気がつかないまま、横断歩道の手前で、一時停止に近い状況から発進し、正面から子供を轢いてしまったことを確認した。

⑶遺族の証言
制服も用意し、幼稚園への入園を楽しみにしていた。両親も子供の将来を楽しみにしていた。心身ともに健康であった。事故以来、地獄の日々が続いている。「運転手と警備員は、何をしていたのか。孫はかえってきません」と祖父が怒りの証言をした。

【ここまでの全文は警備保障タイムズ様記事の引用です。】


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交通誘導警備員が有罪判決を受けた交通死亡事故の総括(1)

平成25年3月4日、交通死亡事故の刑事裁判において、横浜地裁川崎支部の荒川英明裁判官は交通誘導に従事する警備員とドライバーの過失が重なった事で事故に発展したとして、交通誘導警備員とドライバーに対し執行猶予付有罪判決を言い渡しました。

この判決が出た当時、当ブログでもこの事案を取り上げ、「事故の詳細が分からないので判断に苦しむが、特別に権限が無い立場である警備員の誘導が不適切だったからとして有罪判決が出るのはおかしいではないか。被告となった警備員が不憫だ。」という主旨のコメントを書いたと記憶しています。

権限は無いのに責任は生じる・・・

「実に納得がいかない。」

その時はそう思ったのですが、事故の詳細が判明してその思いは一気に吹き飛んだ。この事案に関しては警備員の過失が問われても仕方がないというのが私の見解です。

あくまでも私見であり、この考え方に異を唱える人の方が多いかもしれません。中には「同じ警備員として許せない発言だ。」と批判する人も出てくるだろうと思いますが、敢えて本音を語りたいと思います。

こういう内容の記事を書く事がタブーである事は重々承知していますが、警備業界自体が真摯にこの事案の総括をしなければ、いずれまた同様の事故が発生する可能性が低くないと考えるからです。

同時に一般の人達の間で「警備員の誘導は信用できない。」という認識が強まると思われるからです。この信頼関係の欠落は交通誘導警備の社会的位置付けという点からも危惧せざるを得ない。

故に第三者的な視点から総括すべきだと思うのです。
バイアスの掛かっていない総括を・・・





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2014年12月29日



交通誘導警備の現場は正月休み

毎年の事ですがクリスマスあたりから交通誘導現場は休みのところが増加し28日あたりになると激減します。これは年末の交通渋滞の緩和や交通事故誘発の緩和に配慮したものです。もちろん、施工業者さんの正月休みに伴う休みでもあるのですが。

私の行動範囲にある交通誘導現場は今日で全てが休みになっていました。

ほとんどの会社員はボーナスで懐が暖かい時期ですが、交通誘導警備員は少なくとも1週間は休みになりますから逆に懐が寒くなってしまいます。ボーナスが無い会社も少なくないでしょうし、あっても子供のお年玉より少ないのが実情です。

警備員は危険な目に遭う機会が多いのに逆に賃金は低いという現状です。大手の警備会社と小規模の警備会社との賃金格差は非常に大きいですから、警備会社という事で一括りにするのは的外れかもしれませんけどね。


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